長男「パパ、明日なに取りに行くんだっけ?」
私「マコモダケだよ。」
長男「えーじゃあ山登りとかするの?疲れるの嫌だなぁ。」
私「山じゃなくて田んぼだよ。長靴必須だよ。」
妻「え、マコモダケってキノコじゃないの?田んぼ、は?何させるつもり?」
↑収穫前日のわが家のやりとりです。
「何させるつもり?」とは妻よ、あんまりだな…。
「10/16にマコモダケを取りに行くから付き合って」と家族に伝えてはいました。
が、わたし以外全く乗り気ではなく、詳細を説明したところでテンションが上がることもないだろうなと、説明を放棄していました。
いいから行くぞ、父ちゃん行きたいんだ。
やってみたら楽しかったということもあるよ。
もろもろの説明はこれからだ(読者の方も)!
手賀沼湖畔にマコモダケを取りに行く
今回訪れたのは「柏市コミュニティ植物医師の会 マコモタケチーム」さんが主催するマコモタケの収穫体験。
ネットを徘徊中に目にしていて、いつか行きたいと思っていたんです。
マコモダケ(真菰筍・マコモタケ)の収穫・旬は秋。
コロナも落ち着き、子供の予定ともかぶらなかったので、今年念願かなって行けたというわけです。
駐車場で受付を済まし、収穫場所の圃場(ほじょう:農作物の栽培場所のこと)に歩いて向かう途中、収穫を終えた方たちが戻ってきていました。
おばさまが大量に抱えている草、あれが「マコモ」になります。
マコモがでっかく育つとは聞いていましたが、あんなになるのか。レンジャーの人みたいだな。
ひっぱりましたが、ここから「マコモダケとはなんぞや」を説明していきます。
マコモダケって何?
マコモダケはイネ科マコモ属の植物、マコモ(真菰)の肥大化した茎のこと。
マコモに黒穂菌(くろぼきん)が寄生することで、茎が肥大化し食用になります。
マコモタケチームさんの説明が簡潔にまとめられているので引用させてもらいます。
「マコモタケ」は、黒穂菌(無害)がマコモの株元の茎に寄生して肥大化したものです。
情報引用:柏市コミュニティ植物医師の会 マコモタケチーム ホームページ
マコモは、東南アジアに広く分布するイネ科マコモ属の多年草で沼や河川に群生し、日本でも古来神事などに供せられています。
マコモは漢字で「真菰」と書き、三重県には町の名の由来になった菰野町があります。
マコモの根は水底の土中にあり、葉や茎が水面からでている植物です。
日本に自生する野生種のマコモは、茎が肥大せずマコモタケにはなりません。
現在のマコモタケ栽培の系統は、食用として中国から導入されたものを県の農業試験所等で品種改良されたものです。
マコモは日本にも古来から自生し「神が宿る草」と言われ、神事や祭事に大切に使われてきました。
出雲大社では毎年6月に「マコモの神事」が行われる。
情報引用:Wikipedia マコモ
「出雲の森」から、御手洗井までの道中に清い砂を敷き、その上にマコモが置かれ、宮司はその上を歩いて参進する。
宮司が踏んだマコモは御神威が宿るとされ、参拝者は持ち帰って神棚に飾ったり、浴槽に入れたりする。
出雲大社 注連縄奉納 | 祭典・行事
マコモはイネと同様に春先に田んぼに植え、比較的粗放な管理で栽培できることから、水田の転作用や町おこしなどで栽培する自治体も増えてきています。
その甲斐あってか、日本での認知度もちょっとずつ上がってきているようです。
中国や台湾なとではごく一般的な食材で、中華料理では高級食材として知られているそう。
台湾では、茭白筍(Jiāobái sǔn)、別名「美人腿」と呼ばれているらしい、何それエロい!
↑台湾の「美人腿湯麺」なるカップラーメン。今の日本だとコンプラ的に厳し目なネーミングw
マコモダケの収穫体験。ふくらんだ根元を探せ!
駐車場から数分歩き圃場に到着しました。
鎌をお借りして、収穫体験スタートです。
今回収穫をさせてもらった場所は、前年は水田だった所だそう。
本来の圃場は春先にぬかるんで代かきのトラクターを入れられなかったので、昨年は田んぼだった場所に苗を植えたそうです。
マコモ田は水が抜かれていました。
稲刈り前の水田の水が抜かれるように、マコモ田も収穫1ヶ月ほど前に水が抜かれるとのことでした。
おかげで妻だけ長靴ではなかったのですが、多少のぬかるみはありましたが普通のスニーカーでもなんとか収穫には耐えられました。
「こんな感じで茎が白くなって膨らんでいるものを鎌で収穫してください」とおじさん。
もっとわかりやすく大きく根元が膨らんでいるかと思ったのですが、膨らみは控えめでした。
体よりも大きく育ったマコモの葉をかき分けかき分け、膨らんでいる根元を探します。
背丈を越すマコモが生い茂るマコモ田は、かつて沖縄旅行で見たサトウキビ畑を連想させます、ざわわー。
「あった」「これでっかい」と、家族が宝探し的にマコモダケの収穫を楽しんでいるので(な!来たら楽しいだろ)、わたしは色々下調べをしてきた疑問をスタッフのおじさん(以下:ス)にぶつけました。
私「マコモに寄生して、根元を膨らますと言う黒穂菌ってのは、田んぼに普通にいるもんなんですかね?」
ス「だと思うんですが、同じような環境で育てても膨らむモノと膨らまないモノがあるんですよね。膨らまないモノの方が多いんじゃないかな。」
百発百中でどの株の根元も膨らむかと思いきや、根元が膨らまない株もあるそう。
かと思えば、一株で何本も膨らむ根元があるものもあり、自然の神秘ですな。
私「マコモダケは足が早いとネットで読んだのですが、何日くらいで食べればいいですか?」
ス「まわりに葉っぱをつけた状態であれば、冷蔵庫に入れておけば1週間〜10日は持ちますよ。」
そこまで足が早いというわけではなさそうですね(実際わが家で収穫したモノも、10日は余裕で保ちました)。
私「育ち過ぎるとマコモダケに黒い斑点が入って、それを昔はお歯黒や眉墨の原料にしていたとも読んだのですが、そういうのも見れたりします?」
ス「あぁ、いいですよ(と言ってわざわざ探しに行ってくれたおじさん。ありがとうございます、で数分後…)。こういうのですかね。」
Twitterでもっとわかりやすいモノもあったので参考までに↓
マコモダケを収穫をしないでおくと、黒穂菌の影響で黒い斑点(黒穂菌の胞子)が実に入るようになります。
こうなると食用には向きませんが、古い時代にはこの黒い色素をお歯黒や眉墨などに利用していたそうです。
というか、現代でも伝統工芸品(鎌倉彫)の顔料などに使われているんですって。
私「作業って、全部手作業なんですか?」
ス「そうですね。田植えから除草、収穫まで手作業です。稲と同じで苗を春先に植えるのですが、小指ほどの苗が背丈を越えるほどこんなに大きくなるんですよ。すごい生命力と分けつ力(イネ科の茎が枝分かれすること)ですよね。」
小指ほどの苗が半年でこんなにでっかくなるとは確かに驚きです。
この生命力に、「神の力が宿る」とご先祖さまたちも考えたのかもしれないですね。
私「さっき来る時、葉っぱを持って帰られてる他の参加者の方を見たんですけど、何に使うんですかね?」
ス「お風呂に入れたり、乾燥させてお茶にして飲む方もいらっしゃるみたいですよ。後はお盆の時にお供え物の下に敷くむしろを編むのに使うなんて使い方もあるそうです。葉っぱが必要でしたら、好きなだけ持っていってください。」
わたしがおじさんを質問攻めしている間、家族が着々と収穫を進め、収穫体験終了です。
収穫体験の後、マコモダケの試食をさせてもらう
収穫を終えると、マコモタケチームのスタッフのお母さんたちが、試食を用意してくれていました。
私たちが最後だったらしく、天ぷらとかは終わってしまっていたのですが(食べたかった)、「全部食べていって」と炒め物と炊き込みご飯のおにぎりをいただきました。
ちょうどお昼時だったので、子供たちがあっという間に平らげてしまいました。
詳しい食レポは後ほど…。
「今回聞いたことを、趣味でやってるブログに書いてもいいですか?」と聞いたところ、「全然大丈夫だと思いますが、一応会長に聞いてみてください」とのことでしたので、帰り際にマコモタケチームの会長さんに許可取りをして、お話も伺いました(以下:会)。
私「ここにあるマコモは栽培種とのことですが、この近辺に在来の自生のマコモってあるんですか?」
会「手賀沼の水辺に行けば生えてますよ。マコモは水の中に根を張るから。」
私「マコモの種子がワイルドライスと呼ばれて、アメリカでは食べられていると読んだので、自分で野生のマコモを見つけられたらワイルドライスも集められるのかと思ったんですよ。」
会「日本のマコモじゃタネは食べられないんじゃないかな。あれはアメリカマコモで種類が違うから。」
私「あぁ、そうなんですね(残念)。」
会「種は食べれないけど、ここらのご先祖様はマコモの茎を食べていたと聞いているよ。お殿様には米を収めて、自分らは米は食べられないからマコモの茎を食べていたと。」
私「それは在来のマコモの?肥大化してない茎を食べてたってことですか?ずいき的な?」
会「そう聞いているよ。江戸時代の終わりとかはそうだったと。」
マコモの茎食べてたんだ…。なんかすごい貴重な話を聞いた気がする。
殿様は白飯で、庶民は草って、本当にそんな時代があったのね。
YouTubeでこの収穫体験をレポートしてる動画があったので貼っておきます(会長も出てます)。
ジャングル感はこの動画を見てもらえると、より感じてもらえるかと思います。
色々お話しを聞かせていただき、マコモタケチームの皆さんありがとうございました。
マコモダケ料理を楽しむ!
帰宅したのでマコモダケ料理を楽しんでいきます。
収穫体験では、1,000円で1kg程度とのことでしたが、多分1キロ以上はあるな。可食部は1kg程度なのかな?
収穫したその日の夜だったので、鮮度はバツグンです。
断面も真っ白で、キレイな色です。
クセがなくて美味しい、ほんのり甘みがあって、さすが高級食材
はじめて体験する食感です。
一言で表現するなら「ホクシャキ」。
アスパラとタケノコの中間っぽい食感と書かれていたのを事前に見ていたのですが、熱を通すとホクっとして、ちょっとじゃがいもっぽさも感じます。
ほのかーに甘みもあり、圃場で試食した時は娘ちゃんが「白菜っぽい甘みを感じた」と言っていました。
味がぎゅっと濃縮して、これもンマイ
トースターで焼くと、水分が飛んでマコモダケの味が凝縮されます。
カニを焼くと甘みが増すのと同じで、より甘く感じました。
穂先の方がやわらかホクホクで、この食べ方はかなり気に入りました(簡単だし)。
妻にもつまんでもらうと
「あ、あれだ。イナゴを食べた時の口の中に残る感じに似てる。草っぽいと言うか。マコモダケ好きにはこっちの方がいいだろうけど、私は炒めた方がいいや」
と、「イナゴのあと味」とちょっとよくわからない事を言われたのですがw、確かにイナゴは稲を食べるので系統としては遠からずなのかも(マコモもイネ科)。
マコモダケはクセがなく、油との相性が良いので基本何にでも使えます。
生でも全然いけました。生だと食感は「シャキ」強めです。
土曜の昼に妻が外出していたので「父の肉なし余りものチャーハン」にマコモダケを使ったのですが、マコモダケの食感がアクセントになって、余りモノチャーハンがワンランク上の味になりました。
子供たちも気に入ってくれて、おかわりするほどバクバク食べてくれました、なのでママの分が残ってないなぁ…。
まとめ
新しい秋の味覚になる可能性大
子供の頃、見たことも聞いたこともなかったズッキーニやアボカドが今やすっかり市民権を得たように、マコモダケも数年後には定番の秋の味覚になっているかもしれません。
そのポテンシャルを十分に感じさせる、美味しい食材でした。
話を聞いたおじさんによると「東京新聞と朝日新聞も取材に来た」とのことで、検索したら記事出てきました。
しばらくは無料で読めるでしょうから、リンク張っておきます。
朝日新聞デジタル 全国に先駆け千葉・柏で栽培確立した、あの中国野菜 次はマコモタケ
東京新聞Web 柏で唯一栽培の「マコモタケ」刈り取りしませんか 手賀沼湖畔で最盛期 あす収穫祭
11月上旬まで、手賀沼湖畔の収穫圃場で購入可能ですので、詳しくはマコモタケチームさんのホームページをご覧ください。
「買いには行けないけど食べてみたい」という方は、ビバ現代、インターネットでも買えます↓
食べチョク 「マコモタケ」
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます(礼)。
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