「ヤマブシタケ」ってキノコご存知ですか?
知らないですよね、そーですよね。
天然物は幻のキノコと呼ばれているらしく、奇跡の遭遇で見つけたヤマブシタケを「煮て」「焼いて」「干して」食べてみました。
どんな場所で見つけてどんな味だったのか、お伝えしたいと思います。
天然ヤマブシタケ発見の経緯
ヤマブシタケ発見前週の2021年10月末、日曜朝に日テレの「シューイチ」をたまたま見ていました。
その1コーナーでやっていたのが「旬食クエスト」なるコーナー。
長野県小谷(おたり)村で、宮下草薙の2人が秋が旬のレアキノコを難易度別にランク分けして探していました。
その中で最高難度のレベル3として紹介されていたのが「ヤマブシタケ」。
白くて針の様にとがった形状が特徴的なキノコです。
番組では標高800mの山に登って、レアキノコ、ヤマブシタケを見つけていました。
ロケのガイドさん(地元の自然学校校長/キノコ採りの達人)によると、その方でさえ 10年で8個程度 しか見つけていないレア度だそう。
その時は
あんな珍しい形のキノコもあるんだね。これだったらアミガサタケみたいにキノコ素人の私でも間違えないな
と、今年(2021年)の春に見つけたレアキノコ、アミガサタケのことを思ったものでした。
その記憶もまだ新しい翌週末。
「むかご」を探しに千葉県北西部の森を散策中でした。
え?嘘だろ…。これってヤマブシタケだよな…
一瞬まさかと思いましたが、この特徴的なキノコは見間違えようがありません。
前週テレビで見たヤマブシタケです。
立ち枯れたクヌギの木のうろから、白いヤマブシタケが生えてきていました。
長野の山奥で専門家が10年間で8個しか見つけられていないキノコだよ…それがなんで千葉の都市郊外の森の中にあるの。
そしてそれを先週知ったばかりの私が見つけるとは…、何この強運。運命!?
発見した時の興奮ははっきり覚えています。
「血がたぎる」といった表現がありますが、体温が明らかに上がり手に汗をかいて「キノコでこんなに興奮するんだなw」と思ったものでした、新しいタイプの変態。
実はこの森は近隣住民の抜け道にもなっていて、私がヤマブシタケを見つけたのもそこを歩いていた時でした。
通行する方がいれば、すぐ目につくような場所に生えていました。
自転車押して通るおばちゃんとか普通にいましたし…。
多分この白い物体が食べられるキノコと認識している人がいないからでしょう、この大きさになるまで人目につくのにスルーされていました。
ほぼヤマブシタケと確信はしていたのですが、素人がキノコに手を出すのはやっぱり危険。
また貴重なキノコとの認識はあったので、この日は写真だけを撮って帰宅しました。
専門家にキノコの同定をお願いする
どこに連絡すれば良いかわからなかったのですが、とりあえず市の博物館に電話しました。
すると「市にはキノコの専門家はいないので、県の博物館の連絡先をお伝えします」と言われ県立博物館にメールをしたところ、キノコ担当の博士に「ヤマブシタケで間違いない」と回答をいただきました。
博士によるとヤマブシタケの千葉県内での発生記録は1件だけで、しかも南房総の山の中とのこと。
それがこんな2、300m歩けばクルマが普通に走っている都市郊外の森の中で見つかるとは、ますます貴重なんじゃ。
以下、博物館の先生とのメールでのやりとり(ざっくり再現)↓
私貴重なもので研究に役立てていただけるのなら発生場所にご案内できます。サラリーマンなので土日しかご案内できませんが…
博標本は欲しいのですが、直近だと予定があわないんですよねぇ
私じゃああのー、先生にご相談するのも違うかもしれませんが、そのまま放置しておいても朽ちるだけなので、私が採って食べっちゃっても良いもんですかね?
博どうぞ、どうぞ。キノコは食べてなんぼのところもあるので食べちゃってください。おいしいですよ。楽しんでください!
専門家のお墨付きもいただきました!そして食べても良いって、理解のある先生だなぁ。
ありがたい、ありがたい。超ラッキー!
翌週末、「誰かに採られてるなよ」と願いながらヤマブシタケを休日早朝に採りに行き無事Getできました。
そもそもヤマブシタケってどんなキノコ?
発見の経緯を先にお伝えしたので、ヤマブシタケ基礎情報を。
ヤマブシタケ(山伏茸、学名:Hericium erinaceus)は、サンゴハリタケ科サンゴハリタケ属に属する食用キノコの一種である。
(中略…)夏の終わりから秋にかけ、クヌギ・クルミ・シイ・ミズナラなどの広葉樹の倒木や立ち枯れ木などの材上に生える。時に、生きた樹木の枝枯れ部などから発生することもある。材の白色腐朽を起こす木材腐朽菌の一種である。
情報引用:Wikipedia ヤマブシタケ
「ヤマブシタケ」という特徴的な名前ですが、ヤマブシタケの形状が、山伏の装束についている梵天(ぼんてん)に似ていることからついたそう。
ヤマブシタケは中国で古来より宮廷料理としても扱われてきたレアキノコだそう。
また、近年では認知症の予防・改善に効果があるらしいということで注目されています。
ヤマブシタケは食用のきのことして古くから食べられており、中国では熊の掌、ふかひれ、なまこと共に四大山海珍味のひとつに数えられています。フワフワとした柔らかい食感で味に癖がなく、汁物などに最適!とホクト研究員も好きなきのこだそうですよ。
さらに、近年ではその薬理効果に注目が集まっています。主な作用として免疫賦活作用や認知症予防、抗酸化作用などがあるとされ、数多くの研究が行われている、注目のきのこでもあるのです。
情報引用:【きのこアルバム】ヤマブシタケ ホクト
そんなヤマブシタケなんですが、実はスーパーとかで普通に買えます!
菌床栽培のヤマブシタケは普通に買えます!
実はヤマブシタケは菌床栽培に成功していて、普通に流通しています。
近所の業務スーパーでも、以前は売っていなかったと思うのですが、11月下旬に訪問した時に売っていました。
しいたけ、えのき、しめじとかのように「行けば必ずある」というキノコではなく、たまに見かける程度のキノコですが、数年前に他のスーパーでも見かけたことがあります。
上の写真の最上まいたけさんのヤマブシタケの説明ページ → 最上まいたけ ヤマブシタケ
また先述した通り、ヤマブシタケには認知症の予防・軽度認知症の記憶改善効果があるらしく、ホクトさんでは「記憶の素」なる商品で売っていました。
ホクトOnline Shop 記憶の素
ホクトOnline Shop 生ヤマブシタケ
と言うわけで実はそんなに珍しくないヤマブシタケなのですが、天然モノはやはりレア。
さらに山奥とかでなく、千葉の都市郊外の森の中というのは激レアだと思います。
みなさんも椎茸は知ってるけど、「野生の椎茸」には出会ったことないですよね?そういうことです。
スーパーで購入してきたヤマブシタケと比較しながら食べ比べてみました。
天然ヤマブシタケを観察
天然ヤマブシタケはとにかく香りがいいです。
なんの匂いかと言われればキノコの匂いなんですが、芳醇な品の良い香りでした。
完全主観の例えですが、森の奥に有名建築家が建てた、木をふんだんに使った高級新築別荘の匂いって感じです。
匂いを嗅ぐときに鼻をヤマブシタケのツンツン部分に近づけるのですが、ツンツン部分が鼻にあたっても気持ち良いです。
他の実食レポートで「ヤマブシタケに顔をうずめたい」と書かれているのを読みましたが、確かにその通りもしれません、それくらい香りは良いです。
貴重な天然ヤマブシタケ。少量しかないのですが、3パターンで食べてみたいと思います。
ヤマブシタケをキノコ鍋で食べる
ヤマブシタケはとってもいい出汁が出るそうなので、まずは他のキノコも入れて鍋で食べてみました。
この状態で出汁を飲んでみました。うん間違いない。ウマい!
鶏だしだけの時より、ヤマブシタケを煮込むことで旨味が増しています。
ヤマブシタケの芳醇な香りがちゃんと出汁にうつっていて、コレはおいしい。
一応専門家のお墨付きはもらっているのですが、家族に食べさせる前に万が一を考えてヤマブシタケを一つ毒味してみました。
あー、うん、キノコだ。ちょっとだけ苦味を感じるかな
食べるとちゃんときのこでした、美味しいです。
すこし苦味を感じるのは、ヤマブシタケがそういうキノコだからか、それともこの個体がそうだからなのか。
成功の予感しかしません。他の食材も入れて煮ていきましょう。
あれだけ他のキノコを入れたら美味しいに決まってるいるのですが、家族の感想をば。
長男(8歳):ヤマブシタケはえのきみたいだね(見た目が)
長女(10歳):鍋、おいしい!ヤマブシタケの繊維が春雨っぽいね
妻:味も濃いし、香りもいいね!
ヤマブシタケは食感としてはえのきに似ていますが、エノキほどはくたっとしていないです。
娘ちゃんはこの日お腹が空いていてよほど美味しかったのか、「鍋おいしい」を3回くらい言っていました。
出汁と他の食材で煮込んだので、ヤマブシタケの香りは薄まりましたけど、大変おいしいお鍋でした。
大量にキノコを入れたので、良い出汁が出ていました。
出汁を堪能するためにうどんを入れ、余すことなくいただきました。
いやー、ウマカッタ!
ヤマブシタケのソテー
お次はソテーでいただいてみます。
この食べ方もヤマブシタケ定番の食べ方みたいですね。
あれ、苦いぞコレ
ソテーにすると、鍋を食べた時に感じた苦味が際立ちました。
後味が意外と苦いです。
例えるなら漢方薬っぽい苦みって言うんですかね…体に良さげな苦みではありましたが、子供が食べたら「にがーい」とは言うと思います。
ちょっと味は想定外でしたが、食感はかなり良いです。
この苦味はこの天然ヤマブシタケ個体の可能性もあるので、市販のヤマブシタケをソテーして食べくらべてみました。
市販のヤマブシタケを食べてみる
市販のヤマブシタケをクンクンしてみると、同系統の匂いではありましたが、天然モノと比べると明らかに香りは弱かったです。
菌床栽培だと、やっぱりあの芳醇な香りは出ないんですね。
うん、苦くはない
市販のヤマブシタケのソテーは天然モノより苦くなく美味しいです!
やはりあの苦みは私が採ってきた天然ヤマブシタケ個体のものかなと…。老菌だったのかな?そうは見えなかったけど…。
味はしいたけのバターソテーに良く似ていました。
後味の風味がちょいホロ苦で、天然物はこの風味が際立って苦く感じたんでしょうね。
ヤマブシタケを干して、出汁を取ってスープで味わう
最後は「干しヤマブシタケ」を試してみました。
実は干しキノコは良く作っていまして、しいたけのおつとめ品とかがスーパーで安く出回る時ってあるじゃないですか?
そんな時に大量に購入して、切って干し網で干しておくと「自作干ししいたけ」が家でも簡単に作れるんですよ。
そのヤマブシタケverを作って、戻して出汁を存分に味わおうと思ったわけです。
干しヤマブシタケの臭いをかぐと、あの芳醇な香りのママです。
これは期待していいんじゃないかな、美味しくなるはずだ。
【ヤマブシタケのスープ】
- 干しヤマブシタケの戻し汁400ml
- 市販のヤマブシタケ
- おつとめ品のブラウンマッシュルーム
- ねぎ
- 顆粒鶏だし
- 塩
- こしょう
おじさんのざっくり手料理です。
ヤマブシタケからいい出汁がでるから、ざっくりでも問題ないはず。
ぐがー、すっごい苦い
干しヤマブシタケのスープ、苦いです。
思ってたのとちがーう。
ソテーの時より乾燥させた分苦味が凝縮されてより苦いです。
味は悪くないんです、でも苦いんです。
食べれない苦みではないので完食しましたが、「貴重な天然キノコ」というバイアスなしで食べたら「こんな苦いもの食わせるな」と思うでしょうねぇw。
スープの中の干しヤマブシタケと市販品を食べ比べると、干しヤマブシタケが明らかに苦いです。
市販品は食感もふわふわで食べ応えがあって、なんら問題ないです。
これで苦いスープをまとっていなければより美味しいだろうねぇ…。
「ヤマブシタケ 苦い」「ヤマブシタケ 苦み」等でGoogleで調べると、やはりヒットしました。
どうやら図鑑などによると「ヤマブシタケには苦みがあります」と書いているものもあるらしく、ちゃんと茹でこぼすとその苦みが軽減されるそう。
そうか鍋の時は結構グツグツさせてたから、それでそこまで苦みを感じなかったのか。
これぞ実学!体験してこそわかる知識。
自分で採ってきた天然モノが必ずしも美味しいとは限らない!勉強になるなぁ(苦笑)。
情報引用:梅田椎茸園
↑「少し苦みがあります」ってちゃんと書かれてますね…。
でも苦くても「ヤマブシタケを食べると、脳が活性化される」とあるので、私の脳も活性化されたはずです。
「良薬は口に苦し」ってことで、活性化された脳でこれまでより良い文章が書けるはず…きっと…
Twitterでも「ヤマブシタケ 苦い」の報告チラホラ。
まとめ
市販のヤマブシタケは苦くなくて美味しいですよ
天然ヤマブシタケ、苦い思いもしましたが貴重な体験でした。
天然物はとにかく香りが良かったです!「香り天然ヤマブシタケ 味菌床栽培ヤマブシタケ」です(長い)。
市販の菌床栽培ヤマブシタケはスーパーとかでたまーに見かけます。見かけたらお試しになってみてください。
今回採取してきた木にはヤマブシタケの菌が回っているはずなので、来年以降もキノコが生えてくるのか継続観察していこうと思ってます(→2022年観察しに行きましたが生えてませんでした、残念)。
同じ森で「見た目食べられそうなキノコ」もいくつか見つけたので、今後機会があったらキノコ観察会とかに参加して知識をためていこうかなぁとか考えています。
こういったきのこ狩りの体験ツアーもあるみたいなので、いつか参加してみたいですねぇ。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます(礼)。
コメント
ごぶさたしております❗
これはレアモノですねー
食べてみたいです
自分はこの春から夏は
近くの江戸川でクロダイ釣りを満喫していました。
もう時期的に終わっちゃいましたが……
ご無沙汰しております、お元気でしたでしょうか。
レアものgetでしたが、ちょっとだけ残念なことになってます。
でもかなり良い体験できました、そうそう体験できないことなので。
江戸川はシーバスは知っていたのですが、クロダイもあがるんですね。それを釣り上げているとは、凄いです。
釣りは経験値上げてから本格的に挑戦したいとは思っています。
冬場の「ハゼの穴釣り」もやってみたいんですけどね、仕掛け作るの面倒で躊躇してます…。